大串夏身『文科系学生のインターネット検索術』分野・テーマごとのリンク集を

 書き終わってまず感じたことは、これからインターネット上の情報検索を効果的におこなうためには、分野・テーマごとに優れたリンク集を作る必要があるということだ。
 情報量が多くなるだけでなく、検索のための索引が精密になると、それだけページ検索でヒットするページが多くなり、そのなかから必要なものだけを選び出すことがますます難しくなる。一般的な検索エンジンである、YAHOO!JAPAN、goo、googleなどは、それぞれ工夫しているが、それだけでは無理がある。テーマ・分野ごとに検索エンジンが開発される必要もあるし、なにより、優れたリンク集が増えていくことが望まれる。
 優れたリンク集というものは、その分野に関するサイトを集めるというだけでなく、探しやすい分類がおこなわれ、さらにリンクされたサイト内の情報を的確に検索できるように検索エンジンが用意されている、というものである。こうした条件にあてはまるものは、まだごくわずかしかない。
 情報検索の本を最初に出したのが1990年、もう10年近くになる。その間、2年おきに出してきたので今回で5冊目になる。
 情報源が10年のうちにずいぶんと変わった。今回は、インターネット情報源を中心に、それもリンク集を核に据えて検索し、その周辺の情報を一般的な検索エンジンで検索するという方法を採用した。
 それと、インターネット情報源を補うものとして印刷資料を位置づけている。1990年前後とは、大変な違いといっていい。当時は、印刷資料が中心で、オンラインデータベースが、それを補うという関係にあった。
 それから、オンラインデータベースが充実し、オンラインデータベースを情報源としたルーキットという電子図書館ができ、一時は経営的にも軌道にのったようにも見えた。1995年、インターネットが一般社会のなかに入ってきたが、当初は、日本の情報源はわずかで、インターネットの恩恵が行き渡らなかった。
 ここ数年、日本のインターネット情報源の充実ぶりは目を見張るものがある。とくに中央政府と公的機関、大学図書館のサイトの充実ぶりはきわだっている。今回収録した情報源には、それらの割合が高い。
 ただ、それらにも問題はある。どんなに優れた情報をアップしているサイトであっても、検索しにくいものであるとなかなか使いこなすことができない。また、検索の対象とするにしても、的確なページの検索ができないようだと、これも使われる割合が低くなる。特定の人しか知らないと言うことになる。これでは困る。
 たとえば、中央政府のサイトの充実ぶりは歓迎すべきことで、中央政府のサイトの総合検索エンジン(「電子政府の総合窓口」〔本書158ページ〕で紹介)が充実したことも好ましいことといえる。
 しかし、それでも、たとえば個々の統計表がキーワードで検索できないというのは不都合きわまりない。これは、ページの検索用のキーワードなどが付与されていないから起きる現象とも考えられる。
 一般に検索用のキーワードの付与は、サイトを作成する人には視野に入っていないようである。これは、HTMLのタグにキーワードというタグがあり、そこに入れるとかなり検索できるようになるのだが、これが十分活用されていない、また、メタデータに対する理解がまだまだということも、遠因にあるようだ。
 いずれにせよ、個々の統計表が検索できるようになってほしい。
 検索できるようになると、悩みもまた生まれる。特定のキーワードで統計表を探そうとすると、中央政府だけではなく地方政府(地方自治体)の統計表もヒットして、統計表が都道府県別、ときにこれに加えて市町村別にずらりと並んでしまうことも考えられる。かえっていまのほうがいいという皮肉な結果となる可能性もある。
 問題がつきないのが情報検索ともいえるが、それらの問題をいくぶんでも解消するのが、最初にふれた優れたリンク集の出現だ。
 これからも、いましばらく情報検索・情報探索の方法について考えていきたい。