第13回 朝夏まなと退団、そして2018年の宝塚

薮下哲司(映画・演劇評論家。元スポーツニッポン新聞社特別委員、甲南女子大学非常勤講師)

『宝塚イズム36』発行日の12月1日が迫ってきました。今号も執筆メンバーの宝塚愛に満ちた熱い原稿が多く集まり、すでに校了。印刷そして発売を待つばかりの最終段階になっています。
 最新号のトップを飾るのは、11月19日、東京宝塚劇場公演『神々の土地』『クラシカル ビジュー』千秋楽で退団した宙組トップスター朝夏まなとのさよなら特集です。丸2年という短い就任期間でしたが、作品に恵まれ、濃い2年間だったことが、寄せられた惜別の原稿にもよく表れていました。最後に巡り合った『神々の土地』のロマノフ王朝最後の貴公子ドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフは、朝夏本人にとってもファンにとっても、長く記憶に残る当たり役だったと思います。退団が宿命づけられている宝塚のスターにとって、退団後もファンの記憶に残る作品に出演できることは非常に大事なことだと改めて思いました。退団後に女優として活躍しているOGの宝塚時代の代表作を聞かれて、誰も知らない作品のタイトルを言わないといけないことほど寂しいことはありません。大地真央なら『ガイズ&ドールズ』(1984年初演)、一路真輝なら『エリザベート』(1996年初演)、最近では早霧せいなといえば『ルパン3世――王妃の首飾りを追え!』(雪組、2015年)、『るろうに剣心』(雪組、2016年)とすぐに出てくる人はいいのですが、出ない人のほうが多くて悔しい思いをしたことが何度もありました。『神々の土地』が再演されて、初演は朝夏だったといわれるようになってほしいものです。
 一方、過去を振り返るばかりではなく、年明け最初の話題作、1月1日から宝塚大劇場で開幕するミュージカル『ポーの一族』(花組)への期待を込めた「少女マンガと宝塚歌劇」についての小特集も組みました。『ポーの一族』は、11月16日にパレスホテル東京で盛大に制作発表会見がおこなわれて作品の一端がベールを脱ぎ、明日海りお扮する美少年エドガーの妖しい美しさに、会場の出席者は「この世のものとは思えない」と一様に思わずため息が出たようです。
 この作品の原作は、萩尾望都の少女マンガの伝説的な名作。演出の小池修一郎が、宝塚歌劇団に入団する前の1970年代のはじめごろ、萩尾が原作を発表したころからの熱烈な読者で、宝塚歌劇団に入った暁にはこの作品をぜひ舞台化したいと念願していたといういわくつきの作品。作品が発表された当時、私の周囲にも『ポーの一族』の熱狂的な信者がいて、よく話を聞かされていたので、当時の少女マンガファンにとって特別な作品であることは理解していました。その後、劇団Studio Lifeが上演した『トーマの心臓』(1996年初演)や『訪問者』(1998年初演)などで萩尾作品にもふれましたが、瞳がキラキラ輝く少女マンガ独特の絵柄にどうしてもなじめず、『ポーの一族』はずっと読んだことがありませんでした。今回、舞台化が決まったということで、初めて原作に目を通しました。
 永遠に年をとらないバンパネラ(吸血鬼)一族の少年が主人公の話だったんですね。シェークスピアの『真夏の夜の夢』を宝塚で舞台化した小池の初期の秀作『PUCK』(1992年初演)にも通じる内容であることがわかり、小池の胸の中にはずっと『ポーの一族』が渦巻いていたのだなあといまさらながら納得。年をとらないことを周囲の人たちに悟られないように、時空を超えて転々と引っ越しを繰り返すという設定も、宝塚にはふさわしい題材だと思いました。そういえば美人女優ブレイク・ライヴリーが主演した映画『アデライン、100年目の恋』(監督:リー・トランド・クリーガー、2015年)が同じ設定だったことを思い出しましたが、洋の東西、考えつくことはあまり変わらないですね。
 問題は主人公のエドガーの14歳という年齢の設定。しかし、これも姿形は14歳でも、長年生きていることから精神的には成熟しているという解釈でクリアするのだとか。小池氏は会見で「入団時点で宝塚に『ベルサイユのばら』ブームがきていて、少女マンガと宝塚が親和するのはわかっていたし、いつかぜひやりたいと思っていたのが『ポーの一族』だった。主人公が少年なので、宝塚では難しいかなと思った時期もあったが、ポスター撮影での明日海の扮装を見て、明日海でやれるまで運命の神が待ちなさいと言ったんだなと思った」と語って、いま舞台化する意味と作品への熱い思いを語りました。
 エドガーを演じる明日海は、赤いバラをもって主題歌「悲しみのヴァンパイア」を披露したあと、「原作を読めば読むほど魅力的で、すっかり『ポーの一族』の世界にはまっています。エドガーは少年だけれど、何百年も生きていて、周りにいる普通の少年たちとは明らかに違うものをもっているはずですから、彼のオーラや、少年の姿でありながらのセクシーさ、永遠に生きなければならない悲しみを表現したい」と抱負を述べました。
 そんな2人を傍らで見守りながら、原作者の萩尾氏も「長い間待たされたけれど、私のイメージを超えた美しい世界が目の前に広がるのが予感できて、いまからドキドキわくわくしております」と舞台化への期待を込めました。
 宝塚版は、原作の第2巻(〔フラワーコミックス〕、小学館、1974年)所収の「メリーベルと銀のばら」のエピソードがメインになり、問題の年齢設定は明確化されないそう。小池は、「みなさん一人ひとりさまざまなイメージがあると思いますが、私たちで、いまの花組でできるベストの作品を作りたい」と明言していました。いずれにしても、宝塚の2018年最初にしていちばんの話題作であることは確か。『宝塚イズム36』では甲南女子大学メディア表現学科准教授で少女マンガと宝塚歌劇の両方に精通している増田のぞみさんに原稿を依頼、『ポーの一族』の宝塚での舞台化の意味と期待を執筆していただきました。熱心な宝塚ファンでもある増田さんらしい鋭い分析で読み応えがある原稿が送られてきました。ぜひお楽しみください。
『ポーの一族』を筆頭に、宝塚歌劇は2018年も新作に加えて名作の再演と話題作が目白押し。気が早い話ですが、編著者としては気持ちはすでに『宝塚イズム37』に動きかけています。次の発行は6月1日の予定。どんな特集が組めるのか、いまからあれこれ考えるのが楽しみです。

 

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第12回 スターと作品の戦略的出合い

鶴岡英理子(演劇ライター。著書に『宝塚のシルエット』〔青弓社〕ほか)

『宝塚イズム』が年2冊刊行になり、じっくりと宝塚の半年、そしてその先を検証していこうという基本方針が固まったのと並行して、宝塚に日々起こっている事柄もなんらかの形で書き留め、読者の方々、宝塚ファンの方々と共有したい、という思いでスタートしたウェブ連載「『宝塚イズム』マンスリーニュース」も、早くも12回目を迎えました。以前にも申し上げましたように『宝塚イズム』制作繁忙期には休んでいるので、1年以上が過ぎたことになります。月日がたつのはなんと早いことか!と驚きを禁じえません。本当に1年は矢のように過ぎていくものですね。だからこそ1日1日を大切に過ごさなければと思いながら、ひたすら時間に追われているのが実情なのがつらいところです。
 そんな日々のなかで、この原稿がアップされるころには宙組トップスター朝夏まなとが宝塚大劇場に別れを告げていることになります。太陽のようなトップスターでありたいと言っていた、その言葉どおりの明るさで組を率いてきた朝夏のラストランにもいよいよ加速がかかる寂しさは、宝塚の宿命とはいえ何度体験しても切ないものです。『宝塚イズム36』には、そんな思いが詰まった、力のある原稿が集まるはずです。ご期待いただきたいと思います。
 その一方で、次代の宙組トップコンビ真風涼帆と星風まどかのプレお披露目公演が、ブロードウェイ・ミュージカルの金字塔『WEST SIDE STORY』(2017年)、さらに大劇場お披露目公演が、篠原千絵の同名少女マンガを原作としたミュージカル『天は赤い河のほとり』と『シトラスの風――Sunrise』(2018年)に決まりました。『WEST SIDE STORY』も『天は赤い河のほとり』も、なるほど、新トップコンビにピッタリだな!という作品ですし、宙組発足20周年の記念イヤーに、宙組誕生第1作の演出の栄誉を担った岡田敬二のレビューを、ロマンチック・レビュー・シリーズ20作目の記念と合わせて上演するというのも非常に卓越したアイデアで、ポンと膝を打ちました。しかも、2017年に『はいからさんが通る』(花組)、18年に『ポーの一族』(花組)と、少女マンガ史に残る作品の上演予定が目白押しだったところに、さらに『天は赤い河のほとり』が加わるという話題性も大きく、宝塚歌劇団の企画力を感じます。このあたりも『宝塚イズム36』の新トップへの期待の小特集1、また少女マンガと宝塚を考える小特集2で大いに語られるにちがいありません。
 そうしたラインアップのなかでも、私個人が思わず「そうきたか!」とうならされたのが、雪組新トップコンビのお披露目公演『ひかりふる路――革命家、マクシミリアン・ロベスピエール』(2017年)の楽曲を、世界のミュージカルシーンで活躍する気鋭の作曲家フランク・ワイルドホーンが全曲書き下ろすというニュースでした。これには本当に驚かされましたし、かなり興奮もしています。というのも、こう事態が動いたいまだからこそいえるのですが、雪組新トップスターとなる望海風斗のお披露目公演の題材がマクシミリアン・ロベスピエールを題材にしたオリジナル作品だと聞いたときには、ちょっと首を傾げたからです。もちろん望海の骨太な個性に、人類の平等を夢見て革命に理想を燃やしフランス大革命を成し遂げながら、のちに自らが独裁者となっていくロベスピエールの波乱万丈の人生がとてもマッチするだろうことに異論はありませんでした。「『ベルばら』共和国」とも称される宝塚歌劇で、マリー・アントワネットを断頭台に送った側の人物を、生田大和が主人公としてどう描くのか?という興味も大いにありました。ただ、危惧されたのはタイミングでした。今年(2017年)宝塚では『THE SCARLET PIMPERNEL』(星組)、『瑠璃色の刻』(月組)とフランス大革命の時代を描いた作品の上演がすでに2本あり、七海ひろきと宇月颯がそれぞれの作品でロベスピエールを演じています。いくら主人公として描かれるとはいえ、新トップスターが今年3人目のロベスピエールというのはどうなんだろう、『1789――バスティーユの恋人たち』(月組、2015年)の上演がそれほど前のことではないことも含めて、この時代設定に、ロベスピエールに、宝塚ファンがどうしても既視感を抱くのではないか?、と案じられたのです。
 けれども、フランク・ワイルドホーンという隠し玉の登場で、この杞憂は一気にはじけ飛びました。何しろワイルドホーンは現代のミュージカルシーンを作り上げた作曲家です。難度の高い楽曲を、朗々と劇場中に響き渡るほどの大声量で歌い上げるナンバーが立て続く。どこが山なのかがある意味わからなくなるほど、大ナンバーに次ぐ大ナンバーで圧倒する。このミュージカルの一つの潮流が作られたのには、彼の出現が大きく関与しています。そのワイルドホーンのミュージカルならではのよさや彼の楽曲のスケール感を、望海の歌唱力ならば、そしてトップ娘役になった真彩希帆の歌唱力ならば、見事に体現してくれるでしょう。しかも全曲が書き下ろし。男役を想定して書かれた「ひとかけらの勇気」が宝塚のすばらしい財産になったことを考えると、『ひかりふる路』の楽曲が今後どれほど大きな価値をもつかを考えるだけでワクワクします。雪組の新トップコンビが歌を最大の武器とする人材だったこととこの企画は、もちろん無縁ではないでしょう。
 こう考えると、まずスターありきだった宝塚に、ひょっとしたら変化が生まれつつあるのかもしれない、という推論も成り立ってくるように思います。ブロードウェイ・ミュージカルの傑作古典、有名少女マンガ、そしてフランク・ワイルドホーン。雪組も宙組も新トップコンビならでは、と思える企画ばかりが見事にそろいました。でも一方、こういう企画が先にあって、それに見事にマッチしたスターが選び出されているのでは?と思うと、特にトップ娘役の人選には非常に腑に落ちるものも感じられるのが、とても興味深い点でもあります。もちろんこれは勝手な想像ですから、「いやとんでもない、スターに最適な作品を選んだのです」といわれるかもしれない。もともと鶏が先か卵が先かという話でもありますから。でも、いずれにせよ、創立100周年という華やぎを超えた宝塚歌劇が、新世紀最初の10年を進むために、かつてないほど戦略的な舵取りをしていることだけは、確かに見えてくるのです。スターの個性と刺激的な作品のマッチング、その成果にさらに注目していきたい2017年から18年の日々が続いていきます。

 

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第11回 千秋楽中継に見る宝塚の変化と進化

薮下哲司(映画・演劇評論家。元スポーツニッポン新聞社特別委員、甲南女子大学非常勤講師)

 宝塚史上最強のトップコンビといわれた早霧せいな・咲妃みゆの2人が、7月23日の雪組『幕末太陽傳』『Dramatic“S”!』東京公演千秋楽で、宝塚歌劇団を無事卒業しました。当日の模様は最近の千秋楽恒例になった全国東宝系と台湾の映画館でライブ中継されました。今回は特に上映館数が多く、直前にも上映館が追加されるなど、あらためて2人の人気が証明される盛況になりました。
 東京宝塚劇場の千秋楽のチケットは、チケットサイトでは30万円のプレミアがついたといわれていますが、ライブ中継のチケットでさえも3倍以上の値で取り引きされたといいますからびっくりです。100周年以降、蘭寿とむ、壮一帆、凰稀かなめ、柚希礼音、龍真咲、北翔海莉と6人のトップがすでに退団、それぞれ熱気を帯びたサヨナラでしたが、今回の早霧・咲妃の退団の過熱ぶりは想像をはるかに超えたものになったようで、これほどのサヨナラフィーバーはもう当分ないだろうとさえいわれています。
 トップスターのサヨナラ公演の東京公演千秋楽の様子が全国の映画館でライブ中継されるようになったのはいつごろからだろうと思い返してみると、2015年の柚希退団のときくらいからではないかと思われますので、まだそんな前ではありません。年に一度の祭典『タカラヅカスペシャル』や宝塚歌劇100周年夢の祭典『時を奏でるスミレの花たち』などの特別なイベントの全国的な映画館ライブ中継はありましたが、サヨナラ公演千秋楽のライブ中継は宝塚バウホールや東京、大阪、福岡などの大都市の映画館でのライブに限られていました。全国の映画館でのライブは柚希が最初ではなかったかと。柚希の千秋楽ライブ中継はさいたまアリーナでもあり、それを観ていたファンが、終了後、日比谷に大挙してどっと流れてきたことでちょっとした話題になったものです。柚希の大成功で、最近はサヨナラ公演でなくても東京公演千秋楽はすべての公演でライブ中継がおこなわれるようになり、早霧・咲妃のサヨナラ公演はついに宝塚大劇場千秋楽も全国ライブ中継が実現、宙組公演『A Motion』(2017年)のような梅田芸術劇場での外箱公演までも全国の映画館でライブ中継されるようになりました。
 映画館といってもシネマコンプレックスですから、チケットの売れ行きによって大きなスペースだったり小さなスペースだったりとさまざまに変化しますが、料金は一律4,600円で変わりません。東京公演のサヨナラ千秋楽は1時半に開演して終了は6時半ごろになりますから正味5時間。単純に計算して映画3本分になりますのであながち高いとはいえないのですが、その昔、宝塚大劇場でのトップのサヨナラ千秋楽のときは、チケットを買えなかったファンのためにロビーにテレビを置き、場内の様子を中継、無料で開放していたことを思うと、時代も変わったものだなあと思うことしきり。小さなテレビ画面を食い入るように見つめていたファンの熱い視線が忘れられません。もちろんロビーに集まるファンの多さが人気のバロメーターになったものでした。テレビがプロジェクターに変わり、大劇場に隣接するエスプリホールで中継するようになってから有料になったと記憶しています。そのころはまだ1,000円程度でしたが。いまや宝塚の千秋楽中継は、東宝の年間売り上げを左右するほどの一大イベントになっているようです。
 さて退団した早霧は、退団後10日ほどたった8月初旬、11月に東京と大阪で『SECRET SPLENDOUR』(構成・演出:荻田浩一)と題するコンサートで再出発することを発表しました。東京での千秋楽では、終了後の記者会見で、退団後については「軍の機密」とユーモアたっぷりに言明、男役との決別に対しては涙を見せたと聞いていたことから早期の芸能界復帰はないかもと思っていたので、思いのほか早い再出発の発表にはちょっと驚かされました。とはいえ、舞台人としての可能性は計り知れないと思いますので大歓迎。今後どんな舞台を見せてくれるのか、いずれ『宝塚イズム』のOGインタビューに登場してもらって、そのあたりをじっくり聞いてみたいと思います。
 早霧・咲妃以外にも鳳翔大、香綾しずる、桃花ひな、星乃あんりといった、早霧・咲妃の2人を支えてきたメンバーも同時に退団、次期トップコンビ望海風斗・真彩希帆を中心とした新生雪組はがらりと雰囲気が変わりそうです。そんな新生雪組は、8月25日から始まる全国ツアー公演『琥珀色の雨にぬれて』からスタートします。前トップが退団後初コンサートを発表したかと思うと、宝塚では丸1カ月で新しい組が始動する。そんな目まぐるしい動きの連続で、宝塚は少しずつ、しかしドラスティックに変わっていきます。
 そんな宝塚のダイナミックな動きを正確に、確実にお伝えしていこうというのが『宝塚イズム』の大きなテーマ。その最新号『宝塚イズム36』ですが、すでに大体の構成は固まり、現在、執筆メンバーに原稿を依頼している段階です。
 次号のメイン特集は、早霧・咲妃に続いて今年末で退団する宙組のトップスター朝夏まなとのサヨナラ特集です。朝夏といえば佐賀県が生んだ最初のトップスター。星組トップの紅ゆずるとは同期生です。早くから新人公演の主役に起用され、次代のスターとして大事に育てられてきました。ひまわりのような明るさと、手足の長さを駆使したダイナミックなダンスが魅力的な男役です。トップに就任して丸2年。退団はちょっと早すぎるような気もしないではありませんが、それも一つの決断。退団公演『神々の土地』にかける彼女の意気込みに期待しましょう。さまざまな面から彼女の魅力にアプローチ、朝夏との惜別にふさわしい特集をお約束します。
 もちろん、望海を中心とした新生雪組と真風涼帆を中心とした新生宙組への期待といった、2018年、新たな宝塚の展望を見据えた小特集にも興味深い原稿が集まりそうです。大いに期待していただきたいと思います。
 一方、10月には花組で大和和紀原作『はいからさんが通る』、来年1月には同じ花組で萩尾望都原作『ポーの一族』と少女マンガの王道というべき2作が次々に上演されます。『はいからさんが通る』はかつて関西テレビ『宝塚テレビロマン』(1979年)で、花鳥いつき、平みち、日向薫、剣幸、遥くららといった豪華メンバーでドラマ化されたことがありますが、以来、初めての舞台化。『ポーの一族』は、1974年に刊行されたときから小池修一郎が宝塚での舞台化を念願していたという作品。『ルパン3世――王妃の首飾りを追え!』(雪組、2015年)、『るろうに剣心』(雪組、2016年)と少年マンガの舞台化が続いた宝塚にあって、久々、少女マンガの王道作の登場。この2作の上演に合わせて宝塚歌劇と少女マンガの特集も組みます。
 と、こう書いただけで早くも手に取りたいと思われたファンの方、それは相当な宝塚ファン。発売日はまだ先ですが、首を長くしてお待ちください!

 

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第10回 宝塚激動の夏のなかで

鶴岡英理子(演劇ライター。著書に『宝塚のシルエット』〔青弓社〕ほか)

 早霧せいな&咲妃みゆコンビへの惜別の言葉を中心に、盛りだくさんでお届けした『宝塚イズム35』の発刊から早くも2カ月がたとうとしています。この間の関東はちょっとしばらく記憶にないくらいの空梅雨で、「梅雨明け宣言」といわれても、いつ梅雨があったのだろうか?というほどの日照り続きでした。これでは夏場に水不足になりはしないかと大変案じられますが、一方で九州、また東北などをはじめあちこちで激しい豪雨があり、大きな被害が生じているということで、まず心からお見舞い申し上げます。地球温暖化の影響か、温帯地方だったはずの日本もどうやら亜熱帯・熱帯にジリジリと近づいているようで、夕立などという言葉では到底収まらない激しい雨が一気に降ることが増えました。少女のころ亡き森瑤子さんの小説に頻繁に登場した「スコール」という雨の降り方の描写がいまひとつピンとこなくて、「どうも夏の夕立よりもかなり激しい降り方の雨らしい……」などと想像していたものですが、最近は「きっとこれがスコールなんだろうな」と思う雨がしばしば降るようになりました。なんとか少しでも穏やかな気候が取り戻せるといいのですが。
 などと思い巡らせて鬱々としてしまうときこそ、宝塚観劇がいちばん!なのですが、その宝塚にも激震が走りました。すでに退団を発表している宙組トップスターの朝夏まなととともに同時退団をするメンバーの発表、そして翌日の宙組次期トップコンビ発表、さらに組替え発表は、近年にないと思えるほど大きな動きだったように思います。
 宙組の次期トップスターが真風涼帆だったのは、逆にこの人でなかったほうが天地がひっくり返っただろう!というほどの順当なものでしたから、唯一驚きはありませんでしたし、次期トップ娘役の星風まどかも、まだ組配属前のいわゆる「組回り」中の研1生だった段階で、宙組前トップスター凰稀かなめの退団公演『白夜の誓い――グスタフⅢ世、誇り高き王の戦い』(宙組、2014―15年)で、主人公グスタフⅢ世の少年時代を演じていきなりセリ下がりをしたり、同時上演の『PHOENIX 宝塚!!――蘇る愛』でも通し役のバードを演じるという大抜擢で登場した娘役です。星風はその後も続けざまにバウホール公演ヒロイン、ドラマシティ公演とKAAT神奈川芸術劇場公演で東上ヒロイン、新人公演では『王家に捧ぐ歌』(宙組、2015年)のアイーダ、『エリザベート――愛と死の輪舞』(宙組、2016年)のエリザベートと、宝塚の娘役としては最も大きいといってもいい大ヒロインを次々に演じ、全国ツアー公演『バレンシアの熱い花』『HOT EYES!!』(宙組、2016年)、そして宙組次回公演『神々の土地』『クラシカル ビジュー』(宙組、2017年)でのポスター入りと、まさに破竹の勢いで駆け上がっていました。ですから、いずれ遠からずトップ娘役に就任するだろうことは、誰しもが想像していたことではあれ、このタイミングで、宙組で!という驚きにはやはり大きなものがありました。いうまでもなく宙組には伶美うららという、星風が彗星のごとく現れた前述の『白夜の誓い』上演時に、すでに2番手の娘役の立場でポスター入りしていた美貌の娘役がいたからです。
 確かに伶美には歌唱力に足りないものがあるというウィークポイントはありましたが、過去にも遥くらら、檀れいなど、同様の弱さはもちながらも、トップ娘役として大輪の花を咲かせた娘役たちがいました。その共通点は、何はさておいても……と思わせる美しさで、伶美のそれも先人たちに勝るとも劣らないものでした。特に朝夏とコンビを組んだ『翼ある人びと――ブラームスとクララ・シューマン』(宙組、2014年)や、愛月ひかるとコンビを組んだ『SANCTUARY』(宙組、2014年)など、伶美のクラシカルな美貌と芝居力が、作品全体をより深いものにした情景がいくつも思い出されるだけに、そんな伶美が朝夏とともに、トップ娘役という称号を得ずして宝塚を去るという顛末には、一ファンとして無念なものが残りました。宝塚の娘役は、本当にわずかな一つのタイミングで、その命運が大きく異なってしまうもので、残念ながら伶美もその一人になってしまったようです。彼女がトップ娘役になってくれたら観てみたいと思っていたあまたの夢の役柄は夢のままになってしまいましたが、せめて朝夏の退団公演が、伶美にとっても有終の美を残す公演となってくれることを祈っています。そして、花組から芹香斗亜を2番手に迎えて、真風&星風を頂点にまったく新しい風が吹くだろう次の宙組が、愛月をはじめとしたこれまで宙組で頑張ってきた組子たちにも、働き場の多い作品に恵まれることを願っています。
 そんな激動を続ける宝塚で、7月23日、雪組トップコンビ早霧せいな&咲妃みゆを含めた7人が、この夢の園に別れを告げて去っていきました。千秋楽の『早霧せいなサヨナラショー』は雪組のトップスター時代の曲を網羅した構成でしたが、なかでも際立っていたのは、平成のゴールデンコンビと謳われた早霧と咲妃らしく、2人の場面の比重が大きかったことでした。個人的にも熱望していた『Greatest HITS!』(雪組、2016年)の「オーバー・ザ・レインボー」でのデュエットダンスの再現はもちろん、2人のデュエット曲が『ルパン3世――王妃の首飾りを追え!』(雪組、2015年)、『私立探偵ケイレブ・ハント』(雪組、2016年)、『ローマの休日』(雪組、2016年)と3曲ものメドレーで歌われていて、非常に印象に残りました。退団記者会見での早霧本人の弁によれば「私のサヨナラショーであると同時に、咲妃と2人のサヨナラショーであると思っていたので、デュエット曲の選択については咲妃の意向もたくさん入っています」ということで、どこまでも相手役を尊重している早霧の男気と、早霧と咲妃という、2人がそこにいるだけで観客が幸福を感じることができた「平成のゴールデンコンビ」の神髄を改めて見た思いがしました。
 もう一つ印象的だったのは、サヨナラショー、最後の挨拶、退団記者会見と、セレモニーのすべてが最近には珍しく涙、涙のなかにあったことで、早霧の「できることなら一生男役でいたかった」という言葉に、ずっしりと重いものを覚えました。それがかなったならどんなにすばらしかったことか……と思いますが、それがかなわないことが、宝塚が100有余年の歴史を築いてきた源でもあるのでしょう。この日同時退団した鳳翔大、香綾しずる、さらに咲妃みゆ、それぞれの次の動きが早くも聞こえてきているのはうれしいことです。ほかの退団者のメンバー、そして誰よりも激務の日々を送ってきただろう早霧には、しばらくゆっくりする時間をとってほしいという気持ちももちろんありながら、きっとまたどこかで、必ずやあのすばらしい笑顔に出会えると信じています。本当にお疲れさまでした。さようならは言いません。「See you Again!」

 

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第9回 早霧・咲妃コンビを大特集! 内容充実の『宝塚イズム35』

薮下哲司(映画・演劇評論家。元スポーツニッポン新聞社特別委員、甲南女子大学非常勤講師)

『宝塚イズム35』が6月1日に発売されました。今回のメイン特集は、『幕末太陽傳(ルビ:ばくまつたいようでん)』東京宝塚劇場千秋楽の7月23日付で宝塚を卒業する雪組の人気トップコンビ、早霧せいなと咲妃みゆのサヨナラ特集です。
 この2人は、100周年後の2015年正月に『ルパン3世――王妃の首飾りを追え!』(雪組)で宝塚大劇場でのトップ披露を飾り、以来、退団公演までの全公演が前売りで完売という前代未聞の記録を作りました。宝塚の長い歴史のなかで、トップ在籍中の公演すべてが完売したのは初めてのことだといいます。100周年人気の余韻のなかで、話題性がある演目に恵まれたこともありますが、タカラジェンヌとしての資質に加えて、2人の舞台人としてのたゆまぬ努力のたまものが、この記録を生んだのだと思います。
 早霧の初取材のとき、宝塚音楽学校の受験のために初めて大阪に来たときの思い出を話してくれました。梅田から宝塚行きの阪急電車が8両連結だったことにびっくり。「佐世保では2両連結の電車しか見たことがなかったから、なんて都会なんだろう、と思った」というのです。好きで受験したとはいえ「こんなところで1人で生活できるのだろうか」と漠然と不安を感じたようです。遠い九州からたった1人で都会に出てきた少女の戸惑いが実感として迫り、強く印象に残っています。そんなか弱い少女が、18年後、こんな立派なトップスターになるとは誰が予想したでしょうか。
 2001年初舞台。戦時中のタカラジェンヌの苦難の歴史を描いた藤原紀香主演のテレビドラマ『愛と青春の宝塚――恋よりも生命よりも』(フジテレビ系、2002年)に、収録当時の研1生がエキストラ出演していて、同期の沙央くらまらとともに早霧の初々しい姿も見られます。当初は宙組に配属され、アイドル的な美貌とダンスの切れ味で注目されましたが、背の高い男役が多かった宙組にあって、どちらかというと埋没ぎみでした。研6のとき、和央ようか・花總まりの退団公演『NEVER SAY GOODBYE』(宙組、2006年)新人公演で初主演、ようやくエンジンがかかりました。
 その後雪組に組替えとなり、このあたりから劇団は、早霧をトップ候補として全面的に押し出していきます。しかし、このころは早霧のやる気と役の大きさがまだアンバランスで、歌唱力にも課題があり、かなり無理をしている感じがあって、見ているほうがつらかったこともありました。壮一帆トップ時代の『Shall we ダンス?』(雪組、2013―14年)の女役への挑戦から、それが抜けるように見事になくなり、あとはもうご存じのとおりです。
 サヨナラ公演の『幕末太陽傳』は、宝塚大劇場で大好評裏に上演を終え、6月16日から東京宝塚劇場での公演が始まります。幕末の品川宿を舞台に、江戸落語の『居残り佐平次』をメインに『品川心中』『三枚起請』『お見立て』といった噺を随所にちりばめた人情喜劇。1957年制作の日活映画『幕末太陽傳』(監督:川島雄三)を、小柳奈穂子が宝塚風のミュージカル・コメディとして巧みにアレンジしました。早霧が演じるのは、映画でフランキー堺が演じた佐平次。労咳(結核)を病み、死に場所を求めて品川にやってきた口八丁手八丁の佐平次が、幕末の品川に生きるバイタリティーあふれる人々の姿を見て再び生きる勇気をもらうまでを、早霧は、明るさのなかにも陰影をつけて、人間賛歌を謳い上げることに成功しています。『ルパン3世』や『るろうに剣心』(雪組、2016年)などのアニメキャラクターを宝塚の舞台で作り込んだ貴重な経験が、この舞台で見事に開花したといっていいでしょう。100周年後の新たな宝塚の男役像を築き上げてのラストステージ、『宝塚イズム』の執筆者たちも熱いメッセージを寄せてくれました。
 一方、相手役の咲妃みゆは、2010年初舞台の96期生。月組に配属後、期待の娘役として早くから大役に起用され、清純な娘役から大人の役まで演じるたびに大きく成長してきた、天性の素質をもつ宝塚の娘役の枠を超えた舞台人です。その類いまれなる歌唱力で芝居だけでなくショーでも活躍。昨年(2016年)の『Greatest HITS!』(雪組)では、マドンナの難曲「マテリアルガール」を見事に歌いこなして観客を驚かせました。サヨナラ公演の『幕末太陽傳』では、吉原から品川に流れ着き、お客をえり好みするうちに、後輩のこはるに板頭(トップ)の座を奪われてしまう相模屋の女郎おそめ役。宝塚のトップ娘役のラストステージとは思えない役どころですが、咲妃らしく、そこは品よく、はかなげに、しかし芯がある演技でラストを飾っています。早霧、咲妃という花も実もある2人だからこそ実現したファイナルステージになったのではないでしょうか。そんな2人に対する特集原稿は、退団を惜しむ声で埋め尽くされました。宝塚史上希有なトップコンビの退団に対する惜別の文章をごらんください。
 そして、早霧と咲妃については退団後の活躍も期待したいと思います。2人とも作品と運に恵まれれば、女優として大成できる可能性を十分秘めていると思います。宝塚は、月丘夢路、乙羽信子、淡島千景、新珠三千代、八千草薫、有馬稲子と、戦後すぐの映画黄金時代に娘役から多くの女優を輩出しています。このあたりの人の生の舞台はさすがに観ていませんが、ぎりぎり朝丘雪路や浜木綿子、扇千景そして淀かほるあたりはかすかに記憶があります。『風と共に去りぬ』が1966年に東宝で初めて舞台化されたとき、スカーレットが有馬稲子、メラニーを淀かほる、ベル・ワットリングは浜木綿子と、主要キャストをすべて宝塚出身女優が占め、大きな話題になったものです。
 その『風と共に去りぬ』ですが、宝塚で初演されてから今年で40年になります。今年は、宝塚が初めてレビュー『モン・パリ――吾が巴里よ』を上演して90年という節目の年にもあたり、宝塚的にはそちらのほうにスポットが当たりがちですが、ポスト『ベルサイユのばら』(1974年初演)の急先鋒として1977年に初演され大ヒット、宝塚の現在に至る隆盛の一翼を担った作品として忘れるわけにはいきません。その月組初演のスカーレットは順みつきでしたが、続演した星組のスカーレットに抜擢されたのが遥くらら。彼女は在団中に2度スカーレットを演じ、退団公演になった1984年の雪組公演でのスカーレットは歴代最高といわれる名演技でした。元毎日放送記者の宮田達夫さんがその当時の思い出をつづってくださいました。
 もちろん、レビュー90周年をことほいだ「宝塚レビューの魅力」についての論考も特集します。もともとは「お伽歌劇」から始まった宝塚がレビューを取り入れたことによって、歌劇団のコンセプトが大きく変貌しました。そのレビュー自体も、時代とともに変化する観客の嗜好に合わせて、大きく様変わりしてきています。新時代のレビューとは何か、さまざまな視点で分析します。
 ほかにも星組新トップ・紅ゆずるへの期待の小特集、今回から新たに執筆メンバーに加わってくださった宮本啓子さんのデビュー論考「宝塚に見る戦国武将」など、盛りだくさんな内容はまさにいまの宝塚をそのまま反映しています。
 そして今回の目玉の一つ、OGインタビューは元星組の北翔海莉。退団後初めて『宝塚イズム』のインタビューに応じてくれました。宝塚ファンならずとも読み応え十分。『宝塚イズム35』を全国有名書店でぜひお買い求めください!

 

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第8回 娘役としての完成形――実咲凜音に寄せて

鶴岡英理子(演劇ライター。著書に『宝塚のシルエット』〔青弓社〕ほか)

『宝塚イズム』の共同編著者である薮下哲司さんと、毎月交代で執筆しているこの「『宝塚イズム』マンスリーニュース」ですが、4月と10月にはお休みをいただいています。といいますのも、この2カ月は6月と12月に刊行している『宝塚イズム』の新刊制作が最も佳境に入る時期なのです。雑誌、新聞、さらにウェブニュースと、情報のサイクルが早いメディアから考えると「2カ月も前に制作?」と思われるかもしれませんが、これは書籍である『宝塚イズム』にはどうしても必要なスパンで、執筆メンバーから集まる原稿の精査、校正、OG公演の舞台写真貸与の依頼、対談、さらに自身の担当原稿の執筆と、さまざまな作業に追われる日々が続きます。特に、ニュースの即時性という意味ではほかのメディアに追いつけない書籍であるからこそ、宝塚の半年間をじっくりと検証し、きちんと書き留め、残していくことを最大のテーマに制作に当たっています。
 そんな思いを込めた『宝塚イズム35』、「平成のゴールデンコンビ」と謳われた、早霧せいな&咲妃みゆのさよなら特集を柱とした新刊が、もうすぐお目見えを果たします。その新刊については次回で薮下さんが存分に語ってくださるので、そちらをぜひ楽しみにお待ちいただくとして、私は去る4月30日、『王妃の館――Chateau de la Reine』『VIVA! FESTA!』(宙組)東京宝塚劇場公演千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団した宙組トップ娘役・実咲凜音について書き記したいと思います。
 実咲凜音は、2009年『Amour それは…』(宙組)で初舞台を踏んだ95期生。現在の宝塚で最も勢いがある期といっても過言ではないほど多くのスターが輩出している95期ですが、そのなかでもいちばん早く名前が出てきたのが、娘役の実咲でした。
 何しろ花組に配属になったばかりの研究科1年生で、ショー『EXCITER!!』の「ファッション革命」のシーンで当時花組の男役ホープだった朝夏まなとと組んで銀橋を渡る大役に抜擢されたのですから、そのインパクトは大変なものでした。のちに実咲が朝夏と宙組トップコンビになろうとは、もちろん誰一人予想することはできませんでしたし、実咲のさよなら特集の「歌劇」2017年4月号(宝塚クリエイティブアーツ)の朝夏からの「送る言葉」によれば、この配役発表を見た朝夏が「私と組む、実咲凜音って誰だ?」と思ったということですから、未知数も未知数、いわば海のものとも山のものともわからない時点での抜擢だったわけです。でも、このとき舞台を観ていた観客の多くが「朝夏まなとと組んでいる、あの娘役は誰だ?」と公演パンフレットをひっくり返し、「実咲凜音」の名前を覚えたのもまた間違いないことで、この大きな賭けが、実咲をあれよあれよという間にスターダムに押し上げていきます。
 翌年2010年、研2で『麗しのサブリナ』(花組)のサブリナ・フェアチャイルド役で新人公演初ヒロイン。同じ年に、朝夏主演のバウホール公演『CODE HERO/コード・ヒーロー』(花組)でバウホール初ヒロイン、そしてこの作品は東上もしたので、早くも東京でのヒロインデビューも果たします。さらに11年には『ファントム』新人公演(花組)で歌姫クリスティーヌ・ダーエを演じ、抜群の歌唱力を披露。ソロナンバーで客席からの拍手がしばし鳴りやまなかったほどで、この一夜のヒロインの見事な歌いっぷりの評判は、宝塚世界を瞬く間に駆け回ったものでした。特に実咲は、どちらかというと明るくサバサバとした現代的な個性をもった新しいタイプの娘役として認識されていたので、こうしたクラシカルな役柄をしっとりと演じられることがわかったのも、豊かな歌唱力とともに大きな収穫になり、ここからの実咲の日々は、ただまっすぐに続くトップ娘役への階段を駆け上っているかのごとくでした。なんと花組に在籍した4年間でヒロインを演じた別箱公演3本すべてが東京にきているのですから、劇団の英才教育ここに極まれりといえるでしょう。
 その勢いのまま2012年、宙組に組替えして宙組6代目トップスター凰稀かなめの相手役としてトップ娘役に。実に意外なことですが、むしろここから実咲はヒロイン一直線ではない、さまざまな役に巡り合うことになります。トップ娘役披露だった『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』(宙組、2012年)は、長大な原作のほぼ第2巻までを舞台化していた関係上、凰稀が演じたラインハルト・フォン・ローエングラムと実咲のヒルデガルド・フォン・マリーンドルフの関係は、この舞台の幕が下りたあと、2人の間に新しいページが開いていくでしょう……を匂わせるにとどまるものになりました。また、『風と共に去りぬ』(宙組、2013年)ではメラニー・ハミルトン、『ベルサイユのばら――オスカル編』(宙組、2014年)ではロザリーと、コンビの凰稀の相手役ではない役柄に当たることも続きます。もちろん『うたかたの恋』(宙組、2013年)のマリー・ヴェッツェラなど、娘役なら誰しもが憧れるだろう大役を全国ツアーで務めてもいたものの、トップコンビががっぷり組む作品が本公演で特に少なかったことから、凰稀時代の実咲には、彼女本来の明るさが控えめに映る時期もあったものでした。
 けれども、この時期に蓄えていたもの、古典的な娘役に求められていた「男役に寄り添い、華を添える」という経験が、実咲の宝塚の娘役としての幅を大きく広げていたことが、凰稀退団後、宙組7代目トップスターに就任した朝夏と、まさに初恋の成就のように改めてコンビを組んだ日々のなかで明らかになっていきました。
 それは『王家に捧ぐ歌』(宙組、2015年)のアイーダや、『エリザベート――愛と死の輪舞』(宙組、2016年)のエリザベートという、宝塚の娘役の域をハッキリと超えて、実質的には物語の主人公である役柄を堂々と演じることもできれば、『メランコリック・ジゴロ』(宙組、2015年)のフェリシアや、実咲の退団公演になった『王妃の館』の桜井玲子といった、作品のなかで周りとの呼吸を計り、大切なピースとしての役割を果たす役どころも軽やかに演じられる強みとなって表れます。さらに彼女がすばらしかったのは、歌える娘役であるだけでなく踊れる娘役でもあったことで、ダンサートップスターである朝夏とのデュエットダンスは、宙組に大きな輝きをもたらしました。それらすべての経験が、縁の濃い朝夏との同志のような関係から生み出される小気味よいテンポ感はもちろん、轟悠と正面から渡り合った『双頭の鷲』(宙組、2016年)の全身全霊の演技につながったのです。思えば、劇団が初舞台まもなくから彼女に施した英才教育のすべてが実咲の実りになり、輝きになった、まさにパーフェクトな娘役でした。
 そんな彼女ですから、サヨナラショーで圧巻だった『エリザベート』の「私だけに」の文字どおりのショーストップの歌唱に負けず劣らず、『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』の「蒼氷色の瞳」のリリカルにどこまでも澄み切った歌声がいつまでも耳に残ったのも当然だったのでしょう。そこには役柄に瞬時に染まり、歌に合わせてほほ笑み方さえ変わる、娘役・実咲凜音の完成された姿が輝いていました。実に美しい娘役の、それは見事な旅立ちでした。
 ですから、実咲が早くも今年2017年の年末、市村正親と、宝塚の大先輩・鳳蘭が主演するミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』の長女ツァイテル役を演じることが発表されたのは、とてもうれしいニュースでした。ツァイテル役には大きなソロナンバーがなく、実咲の歌唱力が温存されるのはもったいないかぎりですが、市村、鳳という日本ミュージカル界の大スターとの共演から得るものは、計り知れないほど大きいはずです。宝塚の娘役として完成形をなしたと思える実咲だからこそ、女優としての第2章でどんな歩みを見せてくれるのかに期待が高まります。そんな実咲のこれからを楽しみにしながら、大輪の花を咲かせた彼女に、拍手とエールを送ります。たくさんのすばらしい舞台をありがとう! これからの道のりにも期待しています!

 

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第7回 朝夏退団発表、望海&真彩就任発表、動き続ける宝塚

薮下哲司(映画・演劇評論家。元スポーツニッポン新聞社特別委員、甲南女子大学非常勤講師)

 雪組トップコンビ早霧せいな・咲妃みゆの2017年7月退団に続いて、宙組トップスター朝夏まなとの11月退団が、3月7日に発表されました。そして、9日には雪組の次期トップコンビが望海風斗と真彩希帆に正式に決まり、8月の全国ツアーでのお披露目が発表されました。一方、宝塚大劇場では10日から星組新トップコンビのお披露目公演『THE SCARLET PIMPERNEL(ルビ:スカーレット ピンパーネル)』が華やかに開幕しました。相変わらず宝塚は目まぐるしく動いています。去る者がいれば新たなスターが誕生する。宝塚102年の歴史はこの繰り返しです。

 朝夏の退団は、昨年(2016年)末に発売された雑誌「an・an」(マガジンハウス)宝塚特集のトップスターの項に早霧とともに朝夏も入っていなかったことや、8月から11月にかけての宝塚大劇場と東京宝塚劇場での宙組公演が『神々の土地』と『クラシカル ビジュー』と発表されるのと同時に、その前の6月に梅田芸術劇場と文京シビックホールでおこなわれる朝夏のためのコンサート『A Motion(ルビ:エース モーション)』が発表されたことから、ある程度予想されたことではありました。それにしても、朝夏は2015年3月のお披露目公演『TOP HAT』(宙組)に続く『王家に捧ぐ歌』(宙組、2015年)で正式にトップに就任したばかりですから、まだ2年にもなりません。『エリザベート――愛と死の輪舞(ルビ:ロンド)』(宙組、2016年)に続く『王妃の館――Chateau de la Reine』(宙組、2017年)で新境地を開拓、これからじっくりと朝夏の男役を完成していってほしいと思っていた矢先でもあり、この時期での退団は残念です。いろいろな大人の事情があるのはわかりますが、ちょっと早い気がしてなりません。
 その朝夏ですが、退団会見に臨んで「卒業するその日まで進化し続けたい」と、彼女らしいさばさばとした潔さで退団の思いを吐露しました。退団の決断は昨年7・8月宝塚大劇場での『エリザベート』公演中のことだったと言い、「大作に挑戦したことで組が一つになり、自身も充実感を得た」ことが退団への思いを後押ししたとか。退団後のことは「まだ考えられない」というのは退団発表時のスターの常套句ですが、ここは、最後の公演にかける彼女の思いを汲んで、温かく見守りたいと思います。
 朝夏といえば佐賀県出身としては初めてのトップスター。トップ就任のときは佐賀県あげての応援ぶりで、公演初日に駆け付けたいという知事の意向を汲んで、広報担当が公務と重ならないようにスケジュールの調整に躍起になっていたことが懐かしく思い出されます。当の本人は、同じ佐賀県出身で1期上の夢乃聖夏(元・雪組)が1999年に宝塚音楽学校に合格したとき、地元の新聞に大きく報じられ、「佐賀県からでも宝塚を受けられるんだ」と知って一念発起、レッスンに励んで、翌2000年に受験、見事一発で合格しました。初舞台は香寿たつきがトップだった02年4月の星組公演『プラハの春』でしたから、今年で研16ということになります。
 当初は花組に配属され、長身で見栄えがすることから、新人公演などで早くから主役に抜擢されました。ダンスが得意で雰囲気がよく似ていることから、「ポスト和央ようか」と言われたものです。春野寿美礼、真飛聖、蘭寿とむと3人のトップスターのもとで男役を修業、春野時代には彩吹真央や蘭寿、真飛時代には大空祐飛、蘭寿時代には壮一帆、愛音羽麗と男役の層が厚い花組で、新人時代の勢いほどにはなかなか目が出ず、スランプの時期もありましたが、2012年、凰稀かなめのトップ就任と同時に宙組に組替え、一気に2番手に躍り出て、凰稀退団と同時に100周年後の新生宙組のトップスターに就任しました。
 朝夏がトップに就任した時点での各組のトップは、花組が明日海りお、月組が龍真咲、雪組が早霧せいな、星組が柚希礼音で、朝夏の長身とその凜としたたたずまいがなんとも新鮮でフレッシュな感じでした。課題だった歌唱力も、宙組に組替えになったころからレッスンの仕方を変えたのか、声の出し方を新たに習得したのか、高音低音ともに余裕がある歌い方に見違えるように変わり、よく伸びる歌声は『王家に捧ぐ歌』や『Shakespeare ――空に満つるは、尽きせぬ言の葉』(宙組、2016年)、そして『エリザベート』と、ダンサーであるとともに歌手・朝夏を強く印象づけることにもなりました。
 退団公演『神々の土地』は宝塚期待の作家・上田久美子の新作です。朝夏の最後にして代表作となるような傑作の誕生を期待したいと思います。

 そして、雪組の新トップスターに就任することが決まった望海は、もう誰もが彼女の起用に異論はない、待ちに待った花も実もある実力派です。特に花組の下級生時代に主演した『太王四神記』(花組、2009年)新人公演のときから定評があったその歌唱力は、その後もどんどん進化して、本公演以外でも『アル・カポネ――スカーフェイスに秘められた真実』(雪組、2015年)や『ドン・ジュアン』(雪組、2016年)などの主演作で観客を魅了しています。早霧・咲妃、そしての望海のゴールデントリオは、観客動員数でも5組中トップを誇っています。この雪組人気を望海1人で今後持続できるか、これも注目の的です。お披露目公演は高汐巴、若葉ひろみ時代の花組で上演され、その後も春野寿美礼や柚希礼音で再演されている柴田侑宏の名作『琥珀色の雨にぬれて』全国ツアーと発表されています。望海の個性にはぴったりの選択で、なかなか楽しみな公演になりそうです。

 そんな発表のさなか、10日からは星組新トップコンビ紅ゆずる・綺咲愛里のお披露目公演、ミュージカル『THE SCARLET PIMPERNEL』が宝塚大劇場で開幕しました。2008年の初演時、紅が新人公演で主演したゆかりの深い演目とあって、初日は満員札止めの盛況。2番手時代が長かっただけに、ファンの待望感も相当なもので、初日の熱気は独特のものがありました。それに応えて紅も、終演後の挨拶で「ファンの方の応援があればこそ今日がありました。ありがとうございました」と感謝、その言葉に満員の客席から大きな拍手が送られました。

 そんな新旧入れ替わりが話題の2017年前半の宝塚ですが、6月1日発売のわが『宝塚イズム35』は、雪組トップコンビ早霧せいな・咲妃みゆの退団を惜しんで、彼女たちのコンビの魅力を大解剖します。現在は雪組ですが、早霧は宙組が生んだ最初のトップスターでもあります。華奢な体のどこにあれだけのパワーがあるのか、その源を執筆メンバーが探ります。大いにご期待ください。もちろん、柚希礼音、北翔海莉のもとで2番手修業をした星組新トップ紅ゆずるのお祝い特集もあります。常に動いている宝塚だからこそ、いましっかりと書きとめておかないといけない。『宝塚イズム』のテーマはそれに尽きるでしょう。執筆メンバーからそろそろ原稿が届くころです。編著者として、宝塚への愛にあふれた多くの原稿を読むのを楽しみにしたいと思います。

 

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第6回 花組トップ娘役・花乃まりあ退団に贈る言葉

鶴岡英理子(演劇ライター。著書に『宝塚のシルエット』〔青弓社〕ほか)

 つい先日2017年年頭のご挨拶をさまざまな方たちと交わしたつもりでいましたが、早くもめくれたカレンダーの2枚目、2月が終わりに近づいています。まさに飛ぶように過ぎていく毎日に息つく暇もない思いですし、すでに手配している劇場の前売り券には6月・7月の公演も交じってきました。あまりにも先すぎるように思いながら、このチケットで客席に座るまで、ちゃんと元気でいなければ!と前売り券に鼓舞されているような気持ちにもなるのは、ライブパフォーマンスを愛する者の特権かもしれません。
 そんななか、6月1日刊行予定の『宝塚イズム35』の準備も着々と始まっています。幸い『宝塚イズム34――特集 さよなら北翔海莉&妃海風』は大変ご好評をいただき、青弓社にほぼ在庫がない状態ということで、編著者の一人としてうれしく、ありがたく思っています。書店によってはまだ並んでいるかと思いますので、気になっている方は店頭でぜひお求めください。その熱い勢いに乗って!と、『35』の編集会議も白熱し、平成のゴールデンコンビとうたわれた雪組トップコンビ早霧せいな&咲妃みゆ退団特集を軸に、星組新トップコンビ紅ゆずる&綺咲愛里お披露目、宝塚レビュー90周年、など盛りだくさんなテーマでお送りすべく動いています。こちらもどうぞお楽しみになさってください。
 と、思いは先へ先へと進んでいくのですが、一方でこの2月を思い返しますと、第一日曜日の2月5日、宝塚花組公演『雪華抄』『金色の砂漠』東京宝塚劇場千秋楽をもって、花組トップ娘役・花乃まりあが宝塚を去っていきました。
 2010年、『THE SCARLET PIMPERNEL』(月組)で初舞台を踏んだ花乃は、宙組に配属。可憐な容姿の新進娘役として、いち早く頭角を現します。12年、宙組6代目トップスター凰稀かなめのトップお披露目公演『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』の新人公演では、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ(ヒルダ)役を演じ、早くも新人公演初ヒロイン。13年、同作品の博多座公演では、物語の重要人物ヤン・ウェンリーの養子ユリアンを、キリリと芯が通った少年役として生き生きと演じ注目を集めます。その後も『モンテ・クリスト伯』(宙組、2013年)の新人公演でヒロイン・メルセデス役、『the WILD Meets the WILD』(宙組、2013年)のエマ・トゥワイニング役で宝塚バウホール公演初ヒロイン、さらに『風と共に去りぬ』(宙組、2013年)の新人公演では、本公演で男役スターの朝夏まなと・七海ひろきが演じていたヒロイン、スカーレット・オハラ役を演じ、娘役が演じるスカーレットならではの、可憐さをもった体当たりの熱演を披露しました。何より、博多座公演からここまでの経歴がすべて2013年1年間でのことだった、という事実が雄弁に語るように、花乃は宙組の秘蔵っ子、未来のヒロイン娘役候補生として、大切に大切に育てられてきたのです。
 ですから、翌2014年に花組に組替え、『ベルサイユのばら――フェルゼンとマリー・アントワネット編』(花組、2014年)の中日劇場公演でのロザリー役、『エリザベート――愛と死の輪舞』(花組、2014年)新人公演でのエリザベート役を経て、花組トップスター明日海りおの2代目の相手役、花組トップ娘役に花乃が就任したことは、宙組時代の彼女を知る者からすれば、しごく当然の流れに思えたものでした。
 ところが、明日海の相手役という観点だけで見れば花乃がやや大柄だったことや、これまで当たり役にしてきたのが、『the WILD Meets the WILD』のエマや『風と共に去りぬ』のスカーレットという、宝塚の娘役特有の砂糖菓子のような愛らしさとは一つ異なる、勝ち気な性格の役どころだったこと、さらに持ち味にどこか現代的な香りがあったことが、古典的な美貌を誇る明日海の個性と、ややなじみにくいのでは?ということ――これらが懸念され、ファンの一部から不安の声が上がったのもまた事実で、花乃の才能を高く買っていた一人として、私も陰ながら気をもんだ時期があったものです。
 けれども、トップ娘役として一つひとつの作品に立ち向かううちに、役柄に対してひたむきでまっすぐな花乃らしい演じぶりが、やはり芝居をとことん深めていく明日海とがっぷり向かい合う真剣勝負に、日々爽快さを加えていったように思います。確かに寄り添い型の娘役ではなかったかもしれませんが、でもだからこそ、進化するコンビとしての面白さは抜群でした。『Ernest in Love』(花組、2015、16年)のグウェンドレン、『カリスタの海に抱かれて』(花組、2015年)のアリシア・グランディー、『ベルサイユのばら――フェルゼンとマリー・アントワネット編』(花組、2015年)のマリー・アントワネット、『新源氏物語』(花組、2015年)の藤壺の女御、『ME AND MY GIRL』(花組、2016年)のサリー・スミス、『仮面のロマネスク』(花組、2016年)のメルトゥイユ夫人、そして、『金色の砂漠』のタルハーミネ。こうして並べてみると、意外にも再演物が多いのですが、そのどれもが花乃でなければ、もっといえば明日海と花乃でなければという、丁々発止のやりとりを楽しめる作品になっていたのは、宝塚を観る楽しみをさらに超えて、芝居を観る醍醐味にあふれていました。特に、『ME AND MY GIRL』以降の作品には、花乃のなかになかったはずがない悩みや葛藤が吹っ切れたかのような伸びやかさと勢いがあり、宙組の若手時代のおおらかさも戻って、生き生きと輝く花乃を観ることができ、実にうれしい期間でした。
 そんな花乃だからこそ、退団公演になった『金色の砂漠』の、男役トップスターが奴隷でトップ娘役が王女という、女性が夢を見られるファンタジー世界のなかでの男性優位を描いてきた宝塚としてはイレギュラー中のイレギュラーである設定が生み出す、互いの矜持をかけた愛憎相半ばするきわめてディープな世界を演じきることができたのだと思います。『金色の砂漠』は、花乃まりあという娘役にとっても、また明日海&花乃コンビにとっても、集大成であり代表作に仕上がりました。これぞ有終の美とたたえられるべきものにちがいありません。
 ですから、2月5日の千秋楽におこなわれた花乃まりあサヨナラショーでは、『ME AND MY GIRL』を中心に、花乃の代表作のナンバーを芝居チックにつなげていく見事な構成とともに、実に晴れやかな花乃を堪能できたのも当然だったのでしょう。真紅のドレスで大階段に1人立つ花乃が劇場中に発したオーラのなんと輝いていたことか! 台湾公演にももっていった『宝塚幻想曲』(花組、2015年)の「花は咲く」による明日海との名残のデュエットダンスも美しく、なんとも華やぎに満ちた時間が流れていきました。筋金入りの「雨女」だという花乃ですが、この日東京の天気はどうにかもち、明日海が「花組の雨姫は、今日はみなさまの心と(自分の頬を指して)ここに雨を降らせたのだと思います」という、なんとも粋で愛にあふれた言葉で、去りゆく相手役をねぎらったのがことさらに印象的で、花乃の真摯な別れの言葉とともに胸に深く残るものがありました。
 だからこそ、トップ娘役として花乃まりあが本懐を遂げて退団していったことを疑う余地はないのですが、少し気になるのは、花乃が今後芸能生活をする予定はなさそうだという声です。それはあまりにももったいない!と伝えたい気持ちでいっぱいです。花乃は、宝塚の枠を広げる域にまで達したあの芝居力、映像にも出ていけるビジュアル、心地いい声と、たくさんの宝石をもった表現者です。しばらくはゆっくり休んで、そしていつかどんな形でもいいから、また表現することを始めてほしいと、声を大にして言っておきたいと思います。そんな願いとともに、大輪の花を咲かせた宝塚トップ娘役・花乃まりあに拍手を贈ります。お疲れさまでした、そしてすばらしい舞台をありがとう。

 

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第5回 レビュー90周年、2017年の宝塚のゆくえは?

薮下哲司(映画・演劇評論家。元スポーツニッポン新聞社特別委員、甲南女子大学非常勤講師)

 新しい年が明けました。2017年は、宝塚的にいうと「レビュー」という名称で洋物ショーが上演された『モン・パリ』(1927年)の初演から数えて90周年という記念の年になります。宝塚大劇場ではそれを記念した月組公演、レビュー『カルーセル輪舞曲(ロンド)』を元日から上演中です。『モン・パリ』は、作者・岸田辰彌の日本からパリへの船旅をそのまま舞台に再現しましたが、今回はパリから出発して世界をぐるっと回って宝塚に帰ってくるという構成。作者の稲葉太地はニューヨークやブラジルの場面などできちんと宝塚歌劇の先人たちのレビューにオマージュを捧げ、フィナーレを大階段をバックにした男役の黒い燕尾服と娘役の純白のドレスの優雅で華やかな群舞で締めくくり、見事な宝塚レビュー讃歌になっていました。『エリザベート』(1996年初演)が大ヒットする前に初演されたミュージカル『グランドホテル』(1993年初演)の24年ぶりの再演との2本立てですが、非常に充実した内容で、現在の宝塚歌劇のパワーを存分に証明したといっていいと思います。『カルーセル輪舞曲』は、3日にはNHKBSプレミアムでさっそく録画中継されたのでごらんになった方も多いのではないでしょうか。新トップ珠城りょうの大劇場お披露目公演ですが、宝塚歌劇にとってもずいぶん晴れやかな新年のスタートになったのではないかと思います。
 正月公演は以前、NHKが元日に大劇場から初日の模様を生中継していましたが、宝塚がライブDVDを発売、CSで専門チャンネルの放送をするようになってからは、いつのまにかなくなっていました。ですが、今年から再開するようです。100周年を盛況裏に終え、その後も順調なことから自信が付いたのでしょうか。守り一辺倒からようやく攻めの姿勢に転じたのは、これからの宝塚歌劇の発展にとって喜ばしいことだと思います。再開第1回の今年は生中継ではありませんでしたが、ほぼ実際の公演と同じ時間帯での放送で、臨場感にあふれていました。衛星放送とはいえ、NHKで録画中継が実現したことは、宝塚歌劇を観たことがない人たちへの格好のプレゼンテーションになったのではないかと思います。
 神戸の女子大学で宝塚歌劇講座を担当して今年で11年目になります。毎回、講義の1回目に「宝塚歌劇を観たことがあるか、ないか」というアンケート調査をするのですが、観たことがあるという回答は受講生の1割にも満たないのが現実です。地元・神戸の女子大学でこれですから、全国的には推して知るべし。そんな彼女たちに宝塚の魅力を伝えるのは言葉ではありません。実際の公演を観てもらうのがいちばん。それまで彼女たちがもっていた宝塚歌劇に対するイメージは公演を観ることによって一気に払拭され、ファンになる学生が続出します。それだけ宝塚歌劇の魅力というのは独特で強烈なインパクトがあります。専門チャンネルはファンを育てるコンテンツとしては最上ですが、ファンになる前の初心者を引き付けるにはやはりNHKの全国放送に勝るものはありません。
 中継放送再開がきっかけで、いつの日かまたNHKに宝塚のバラエティー番組ができて、『紅白歌合戦』でタカラジェンヌが歌うところまで発展すれば申し分ありません。大竹しのぶの「愛の讃歌」が悪いとはいいませんが、望海風斗がNHKホールで絶唱、全国の視聴者をびっくりさせたいと思うのは私だけではないと思います。
 正月公演の中継の話題からとんでもないところに話が飛びましたが、2017年の宝塚歌劇はどうなるのでしょうか。小川友次理事長は雑誌「歌劇」(宝塚クリエイティブアーツ)の年頭所感で、全国のシネマコンプレックスでのライブ中継をさらに充実させるとともに、技術力・作品力など「総合力」のさらなるアップを目指すと表明しています。正月の月組公演、まずは幸先がいいスタートになったと思います。
 気になるスターの動向ですが、宝塚ならではの新陳代謝をさらに積極的に加速させようとする狙いがうかがえます。今年は7月に雪組のトップコンビ、早霧せいなと咲妃みゆが退団することがすでに発表されています。100周年以降にトップになったコンビが退団するのは星組の北翔海莉、妃海風に続いて2組目。宝塚というところは本当にめまぐるしく動いているのだなあというのが正直な印象です。
 昨年暮れ、花、月、星、宙の4組のスタークラスが勢ぞろいした『タカラヅカスペシャル2016――Music Succession to Next』が開催されました。年に一度の祭典で、各組のスターが一堂に会して全体的なスターランクが明確になることから毎年注目されてきました。最近はトップ、2番手以外のランクを明確にすることはほとんどなく、すべて同ランク的な扱いで、どこからも文句が出ないように無難にまとめてきた感がありましたが、今年は久々にドラスティックな動きがありました。
 星組が新トップコンビ、紅ゆずると綺咲愛里のお披露目、月組も珠城がトップとして『タカラヅカスペシャル』初出演だったこともあり、各組の2番手は花組・芹香斗亜、月組・美弥るりか、星組・礼真琴、宙組・真風涼帆がラインアップ、一気に若返った感がありました。ここまではごく当たり前で順当だったのですが、第1部の後半、専科の凪七瑠海、沙央くらま、星条海斗、華形ひかるが歌い継いだ作曲家・寺田瀧雄の17回忌にちなんだメモリアルコーナーで、事態は一変しました。バックで踊った柚香光、暁千星、七海ひろき、愛月ひかるの各組3番手にそれぞれ女役のお相手が付き、それを各組の次代を担うと期待されるスターたちが務めたからです。その4人は花組・水美舞斗、月組・朝美絢、星組・瀬央ゆりあ、宙組・桜木みなとの面々でした。各組には各組の事情があり、組だけの公演ではどうしても抜擢しづらいところをこういう形で起用、劇団の期待の高さを示してみせたのはなかなかでした。これが偶然のことではないのは、12月26日に発売された雑誌「an・an」(2016年12月28日―1月4日合併号、マガジンハウス)の宝塚特集を見ても明らかです。「2017年もやっぱり宝塚が好き!」という特集記事で「いま注目の次世代スター」として登場したのがほかならぬこの4人と雪組の月城かなとでした。
『宝塚イズム35』(6月1日発売)も、そんな2017年宝塚のホットな動きをふまえて、いよいよ今月から始動します。編集会議はこれからですが、7月の『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)』千秋楽で退団する雪組のトップコンビ、早霧と咲妃をふまえ、彼女たちの宝塚での足跡を振り返り、今後の活躍に期待する2人のサヨナラ特集がやはり最大の目玉になることでしょう。ほかにもさまざまな新企画、タイムリーな特集を打ち出していきたいと思っています。ご期待ください。

 

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第4回 早霧&咲妃コンビの退団発表と充実の轟主演舞台に見える宝塚

鶴岡英理子(演劇ライター。著書に『宝塚のシルエット』〔青弓社〕ほか)

 宝塚歌劇の評論シリーズの最新号『宝塚イズム34』を12月1日に無事刊行しました。特集は11月20日に宝塚を巣立っていった北翔海莉&妃海風コンビに贈る評論の花束「さよなら北翔海莉&妃海風」。小特集に『アーサー王伝説』(月組、2016年)で月組トップスターとしてのスタートを切った珠城りょうにエールを送る「珠城りょう――若き月組トップへの期待」と、非常にレベルが高い仕上がりとなった『ドン・ジュアン』(雪組、2016年)で主演し、進境著しい雪組2番手スター望海風斗をキーワードに各組2番手を語る「望海風斗の衝撃――各組二番手戦力分析」をそろえました。このほか、2016年4月から11月の大劇場作品公演評、編著者2人で外箱公演を一気に振り返る対談、東西の新人公演評、OG公演評、さらに宝塚OGによる『CHICAGO』ニューヨーク公演観劇報告と、天津乙女さんのありし日をつづった貴重な寄稿文。そして17年の元旦から月組で幕を開けるミュージカル『グランドホテル』の初演主演者である涼風真世さん登場のOGロングインタビューまで、充実のラインアップになっています。北翔&妃海ファンのみなさんからはもちろん、望海ファンの方々からもさっそく熱いメッセージが届いているのに加え、紫の美しい装丁も、北翔海莉&妃海風サヨナラ公演のロマンチック・レビューや、サヨナラショーで再現された『LOVE&DREAM』(星組、2016年)のシンデレラのシーンで妃海が着用したドレスを連想するという声をいただき、大変うれしく思っています。宝塚ファン必携の評論シリーズとして今後もますます内容を充実させていきますので、ぜひ書店でお買い求めください。青弓社サイトからのオーダーももちろん可能です。
 さて、宝塚の大きな動きとしては、なんといっても圧倒的な人気を誇る雪組のトップコンビ早霧せいなと咲妃みゆが2017年7月23日、『幕末太陽傳』『Dramatic“S”!』東京宝塚劇場公演千秋楽をもって同時退団するという発表がなされたことでしょう。さまざまな要因から、この公演での退団が予想はされていた2人ですが、宝塚の動員記録を塗り替え、コンビとしても組としても乗りに乗っている時期だっただけに、劇団がこれだけのトップコンビをそう簡単に手放さないのではないか?という思いもどこかではあり、正式な発表にはやはり大きな寂しさが募りました。最近では異例のトップコンビの同時退団発表、しかもその会見日が11月22日「いい夫婦の日」というのは、もちろん狙ったことではなかったそうですが、2人のプレお披露目公演だった『伯爵令嬢』(雪組、2014年)の初日前囲み会見で早霧から「結婚します。そのくらいの覚悟がないとね」という咲妃をちょっとからかった発言が飛び出したこの2人らしいなと、感慨も大きかったものです。退団発表を挟んで東京での上演となった『私立探偵ケイレブ・ハント』(雪組、2016年)は、早霧時代の雪組では初めてとなるオリジナルのスーツ物。2人が初めから恋人同士という設定に新鮮さがあり、コンビとしてキャリアを重ねてきたいまだからこそ出せる雰囲気がきちんとあって、面白い仕上がりになっていました。原作物でヒットを飛ばしてきた印象が強い雪組だけに、適材適所に配置された主要メンバーの活躍に、オリジナル作品なればこそのよさも感じられました(鳳翔大には、何かもう少し別の役を書いてほしかったですが)。さらに、ショー『Greatest HITS!』は、大劇場ではいくら「あわてんぼうのサンタクロース」を組み入れていても、ちょっと早すぎるなぁと感じられたクリスマスメドレーがどんぴしゃり!のシーズンになったことも手伝って、明るい楽しさにはじけていて、癖になるショーとして楽しめます。ここでも圧巻はやはり早霧&咲妃のデュエットダンスで、ベートーヴェンの『運命』を使った望海&彩風咲奈による赤と白の激しい対立の場面が、2人の緑がもたらす安らぎと幸せオーラによって昇華される流れは、いま絶好調の雪組を象徴するシーンとしてなんとも美しいものでした。本当に早霧&咲妃は、2人が並んだときの絵面としての美しさが抜群なだけでなく、芝居をしてもともに踊っても、お互いがそれぞれのよさを引き出し合い、引き立て合う、近年屈指のベスト・カップルです。正直、まだまだこの2人で観たかった作品、夢は多くありますが、残された7カ月、2人ならではのラストランの輝きを見届けたいと思います。もちろん、次代を担うだろう望海の、任せて安心の盤石さと豊かな歌唱力にも、また新たな夢が描けることでしょう。宝塚はこうして続いていくのですね。つくづくすごいシステムだなと感じずにはいられません。
 一方で、この雪組公演と同じ時期に、KAAT神奈川芸術劇場で専科の轟悠と宙組トップ娘役の実咲凜音をはじめとした宙組精鋭メンバーによる『双頭の鷲』も上演され、その高い完成度に圧倒されました。脚本・演出の植田景子の美意識が凝縮された舞台で、それに応えた出演者・スタッフすべての力がほとばしるさまは見事なものでした。ジャン・コクトーの『双頭の鷲』(1946年)を宝塚で上演しようというこの企画自体もそうなのですが、ここ数年、轟悠の存在が宝塚の幅を広げ、新たな挑戦を成し遂げている姿には、退団と新トップスター誕生という別れと再生を繰り返す宝塚のスターシステムが紡いできた100年を超える伝統とはまた別の安定を宝塚にもたらしていることを確かに感じずにはいられません。役者には年齢を重ねないとできない役柄が確実にありますし、轟さえいれば今後の宝塚でそうした役柄を脇筋ではなく主役で取り上げることが実現していくと思います。変わり続けることでバトンをつないできた宝塚に変わらない象徴があることは、やはり貴重なものですね。春日野八千代亡きいま、その重みを痛感します。
 そんな轟が『For the people――リンカーン 自由を求めた男』(花組)そして『双頭の鷲』という秀作をそろえてきたのをはじめ、2016年の宝塚には見応えある作品が並びました。新たなファンを獲得した『るろうに剣心』(雪組)。実在の人物を宝塚ならではの自由さで描いた作品が、くしくもトップスター退団公演としてそろった『NOBUNAGA〈信長〉――下天の夢』(月組)、『桜華に舞え』(星組)。宝塚の財産演目である海外ミュージカル『ME AND MY GIRL』(花組)、『エリザベート――愛と死の輪舞』(宙組)。オペレッタの『こうもり』(星組)への挑戦や、シェイクスピアの人生を作品でコラージュした意欲作『Shakespeare――空に満つるは、尽きせぬ言の葉』(宙組)。またオリジナル作品ならではの作家の個性が表れた『私立探偵ケイレブ・ハント』(雪組)、『金色の砂漠』(花組)が続きました。さらに数多くのショー作品のきらめきが並び、外箱に目を転じれば『ローマの休日』(雪組)、『ドン・ジュアン』『アーサー王伝説』など、大作も多く登場しています。6月と12月に発行している『宝塚イズム』では、残念ながらこうした1年の作品のベストを語り合うような企画は作りにくいのですが、きっと宝塚ファンの間では、一人ひとりの胸にある独自のベストに話がはずんでいる時期ではないでしょうか。見どころの多い作品がそろった2016年の宝塚。この勢いと盛り上がりが、また17年にも続いていくことを期待しています。

 

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