第27回 祝! 『クラシック100バカ』増刷

 このメール・マガジンも、ずいぶんと間があいてしまった。昨日、青弓社から「『クラシック100バカ』を増刷します」と連絡があった。これは2004年秋に出版して、ほどなく増刷されたので、今回は第3刷ということである。といってもそんなに大量部数ではないが、どこの出版社も「売れない」とぼやいているご時世にあっては、まことにおめでたいと言わざるをえない。
  いま読み返してみると、項目によってはちょっと古くなってしまったものもあるが(たとえば、CCCDについて書いてあるものなど)、「よくもこんなにいろいろと書いたなあ」というのが正直なところである。この本を出して、「本当のバカはお前だよ」なんてネットに書かれていたし、一部の人は不快な思いをしたかもしれない。しかし、私の基本的な考えとしては、蔭で裏でブツブツ言ったところで何も生み出さない、始まらない、ということである。それらは単なる愚痴以外の何ものでもないからだ。
『100バカ』もある意味力作だったが、自分ではなんといっても構想から完成まで12年も費やした『クラシック名曲初演&初録音事典』(大和書房)に思い入れがある。ごく最近、出版社に問い合わせたら、この事典もほとんど在庫がなくなっているそうだ。もちろん、増刷したらしたで単純にうれしいが、私としては近い将来大幅に増補改訂したいという気持ちがある。理由は、ある程度内容を掘り下げようとしたために曲を絞り込んだことと、もうひとつは締め切りまでにSP、LPなどの現物(あるいは初版が手に入らず、やむなく再発売のもので代用したものもあった)が手に入らなかったものが多数あったからだ。

 ところで、話題はガラリと変わる。3月25日、スクロヴァチェフスキ指揮、読売交響楽団のブルックナーの『交響曲第8番』(東京オペラ・シティ)を聴いて、たいへんに感銘を受けた。近年聴いた演奏会のなかでも屈指のものだった。かつて客席で耳にしたマタチッチ/NHK交響楽団を上回ったかもしれない。これだけ創意と工夫に満ちていながらも、曲も持ち味を全く崩してないのは驚きだった。この日はどうやら録音が入っていたらしい。発売されるかどうかは不明だが、発売されたときのために、詳細な報告はあえて記さないでおきたい。ただし、これだけは書いておきたい。読響の真剣で真摯な演奏ぶりはすごかった。これだけやってくれれば、正直、そこらの海外オーケストラ公演はあえて行く必要がないと感じた。拍手。

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