52年間ファンとして追いかけてきた記念品――『沢田研二大研究』を書いて

國府田公子

 2018年に、偶然のきっかけで私のことを「読売新聞」夕刊に5日間にわたって連載してもらいました。それが引き金になって「本を出版しないか?」という話が届きましたが、最初は頑なに辞退していました。売れないと思ったからです。しかし、重ねて説得されて、売れるかどうか半信半疑ながら出版を引き受けました。
 とりあえず、手元にあるファンクラブの会報をワープロで入力してプリントすることからぼちぼちと始めました。というのも、何十年も前の会報は手書きをコピーしたものだったのです。
 7月からジュリーのツアーが始まったので、原稿まとめと並行しながら、私が運営しているウェブサイト「Julie’s World」も更新していました。
 そんなとき、あのコンサートのドタキャン騒動が起こりました。ジュリーから理由を聞くまでもなく致し方ないと思っていたのに、マスコミは大騒ぎ。その会場にいた私は「さもありなん」と思ってすぐに帰宅しました。思わぬところでジュリーが取り上げられて、そのことにびっくりしていると、フジテレビの『バイキング』の担当者から「話を聞きたい」という依頼がきました。「私の気持ちを素直に話せばいい」と思って引き受けました。ウェブサイト「Julie’s World」を開設・運営するにあたって、匿名とかハンドルネームでは情報発信者としての責任がもてないと思って最初から実名・公子で通していたので、名前や顔を出すことに抵抗はありませんでした。
 ところが、私が取材を受ける直前にジュリーが記者会見を開きました。こんなことはこれまでになかったし、普段のジュリーの姿を見ることができて、ファンはとてもうれしく思いました。もちろん、キャンセルすることはいいことではありませんが、諸般の事情によってはありうるだろうと思っています。ジュリーの考えとドタキャンの理由がわかったので「私が出る幕はないな」と思ったのですが、取材は予定どおりにおこなわれて放送されました。テレビの影響力は強いもので反響は大きく、コンサート会場でたくさんの方から声をかけられるようになりました。
 そのほか、TBSの『あさチャン!』や『サンデージャポン』からも依頼をもらいましたが、実現しませんでした。騒動の次のコンサートでジュリーがドタキャンの事情を説明したのでファンとしてはこの問題は解決ずみだと思っていたのに、騒動はなかなか収まりませんでした。
 そして、今度は「週刊朝日」(朝日新聞出版)の編集者(ジュリーのファンです)から「これまでの報道を快く思っていないので、いま一度、ジュリーを記事にしたい」と取材依頼が届いたので、引き受けました。記事になると、次には「週刊文春」(文藝春秋)からも「話を聞きたい」と。ただこちらは、「あなたの趣旨に反する記事になるから掲載しないことにした」と事前に連絡がありました。
 そんな展開を迎えるなか、年末に原稿をまとめて青弓社に届けました。
 できあがった本書のカバーには大きな文字が輝いていました。うれしいような、気恥ずかしいような、複雑な気持ちでながめました。
 ジュリーの武道館での3間のコンサートも無事に終わって、代替えの大宮ソニックシティのコンサート前日の2月6日に、TBS『ビビット』から再度、密着取材の依頼がありました。これも引き受けて、コンサートが終わったあとには自宅でグッズなども撮影しました。インタビュアーが本にも注目してくれたためか、8日の放送では本が何度も大写しになっていました。
 反響はこれでは終わりません。出版して放送もされて少し落ち着いて銀座をブラブラしているときに、今度は街頭インタビューにつかまりました。「いま、何をしてますか?」などに答えていたら、突然、「平成最大のニュースは?」と聞かれたので、とっさに「本を出版したこと」と返事したら取材者の目がキラリと光りました。詳しく教えてほしいと言うので、顛末を話しました。4月後半に放送予定のNHK-BSの番組ですが、どんなふうな内容になるのかもわかりませんし、もしかしたらボツになるかもしれません。
 また、「週刊文春」では本書を紹介してもらいました。「誰かのファンで居続けることは、こんなにも尊い」と書いてもらい、うれしく読みました。
 こうした思いがけない展開に、私は「いったい、何がどうなっているの?」と少々戸惑っています。ジュリーのドタキャン騒動がなければテレビに出たり週刊誌に載ったりすることもなかっただろうと思います。
 ファンを52年やってきて、ウェブサイトの運営も20年過ぎ、毎月書いていた会報「LIBERY」は500号を超えたちょうどそのときの出版の依頼だったので、「いい記念になる」と思って出版した『沢田研二大研究』。ですが、私はカリスマファンだとかファンの代表だとは全然思っていません。ただの一ファンです。

 さて、これから、何が起こるのでしょうか。5月9日から始まる「沢田研二LIVE2019 『SHOUT!』」に期待しながら過ごしています。