2013年6月5日、「朝日新聞」の夕刊に諏訪根自子の新発見音源についての記事「天才少女全盛期の調べ」が掲載されていた。曲目はブラームスの『ヴァイオリン協奏曲』、1949年11月28日の放送で、東宝交響楽団との共演とある。これを見て、私は何やら意図的なものや、釈然としないものを感じた。諏訪は2012年3月に他界していたが、それが公になったのが同年9月だったため、多くの人に衝撃を与えたのは記憶に新しい。とにかく、この「朝日新聞」の記事を読むかぎりでは、新発見の音源は諏訪の死後、思いがけず発見されたかのように読めてしまう。だが、これは厳密に言えば正しくない。そもそもこの音源の存在は、私が知るかぎり、少なくとも数年以上も前に知られていたからだ。なぜなら、私はある関係者から「このような音源があるが、発売する意義はあるだろうか」と相談されたことがあり、しかも、その関係者は私に音源のコピーまで送付してくれたのである。
こうした音源が世に出ることに関しては歓迎すべきことだが、正しくない事実関係については、やはり異議を唱えたい。なお、私が得た情報では、このブラームスの伴奏指揮は上田仁(うえだ・まさし)とのことである。
(2013年6月5日執筆)
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