パワーストーンが毎日を明るくする――『癒しの宝石たち――パワー効果と活用法の事典』を書いて

北出幸男

  いまでは小学生の子供でも、水晶は幸運を運んでくるとか、ラピスラズリは運をよくする、ローズクォーツは恋人を招く、とかということを知っている。
  ことのおこりは、20年ほどまえに始まったパワーストーンブームにある。
  当時はアメリカ文化がまぶしい時代だった。ショッピングモールや量販店など、アメリカでの流行は5年ほど遅れて日本列島に到来してメディアをにぎわせていた。
  クリスタル・ヒーリングという言葉もアメリカ発の情報として私たちのもとに届いた。そのころぼくは、おもに雑誌のために原稿を書いたり写真を撮ったりして記事をまとめるという仕事をしていた。ある雑誌でマインドパワー強化のための特集を組むことになって、クリスタル・ヒーリングを項目のひとつに入れようと思った。それは視覚効果抜群で、いかにもニューエイジという感じが魅力的にみえた。
  ところがいざページを作ろうとすると、該当する製品がどこにもなかった。手に入らない製品を使って記事を作るわけにもいかず、さりとてあきらめるにはしのびなかった。
  結局はお気楽な気分で、「OK、売っていないのであれば自分で売ればいい。そうすりゃとにかくページを作ることができる」と考えた。
  こうやってパワーストーンとの付き合いが始まって約20年たつ。この間、パワーストーンについての単行本を5冊書き、いくつかの雑誌でパワーストーンがらみの特集ページを組んだり、編集に協力してきた。
  そんなわけでこの本には20年間に蓄積してきた情報の「おいしい部分」だけが、アラジンが開いた洞窟の財宝さながらに詰め込んである。気分では自分とパワーストーンとの関係の総決算一歩手前というつもりで書いた。
  今日ではインターネットの普及はなはだしく、100人が100の意見を不特定多数の人にむかって表現できるようになっている。それは悪いことではないのだが、ことパワーストーンやスピリチュアルな領域に関しては、あと5センチ賢くなるならもっと多くが見えるだろうにと思えるような情報が錯綜する状況を生んでいる。楼門に驚いて本殿を見ずにいるのは惜しいことだと思ってもいる。
  まずはこれを何とかしたい。レベルの低い情報や、吟味するなら「実」のない情報に惑わされずに、いつまでも初(うぶ)な心持ちでパワーストーンに接する方法がある、それを提示したいという気持ちが本書には込められている。

  本書は以下に述べる5つの小事典からなっている。
(1)水晶の形状別小事典……水晶ポイントは形状によってさまざまな名称がある。「石の花」のひとつひとつに与えられた名前だと思うなら、眺めるだけで神秘に出会える。
(2)水晶 色と内包物の小事典……ユリやバラにたくさんの種類があるように、水晶もまた色と内包物によって種類分けされている。知らない名前の石たちに出会って驚けるなら、それは楽しいことである。
(3)メノウとオパールの小事典……メノウ・オパール・ジャスパー・テクタイトなど、おもに潜晶質や非晶質の水晶の仲間たちをひとつにまとめた。
(4)ケイ酸塩鉱物の小事典……水晶の成分であるケイ酸(シリカ)にアルミニウム・鉄・マグネシウムなどが結びつくと、多種多様の鉱物が誕生し、万華鏡さながらの鉱物たちのミラクルワールドが一挙に開く。ここでは石たちの集いに胸躍る喜びを体験できる。
(5)各種鉱物の小事典……鉱物の科学的分類に従って、ケイ酸塩鉱物に属さないものをひとつにまとめた。宝石の成分を確認するだけでも多くの驚きに出会える。パワーストーンの心理学的パワー効果を学ぶなら、だれもがそこに光明を見いだせる。

「すべての宝石鉱物はパワーストーンである」とこれが全体の支えで、超古代から近代に至るまで、珍しい石や美しい石はことごとくすべてが、彼岸のパワーが凝集したパワーストーンとして扱われてきた。美しい天然石を愛でる人々の心根には、縫いぐるみに話しかける子供たちのような純真なきらめきがあった。
 パワーストーンに興味をもつ人のすべてが、そうした心根をより確かなものとできるよう願っている。