鶴岡英理子『宝塚ゼミ00年』宝塚ゼミ24時間開放中!

 真夏だったのに・・・そう思いながら空を眺めている。なんだか気がついたら冬で、気がついたら2000年、ミレニアムイヤーの終わりが近づいていた、そんな気分なのだ。でも手元に一冊の本がある。
『宝塚ゼミ00年』
 駆け抜けた日々に置き忘れた秋の代わりに、ピンクの花々の表紙が微笑んでいる・・・と・・・詩的に決めたい!と願う私を無視して、ゼミのメンバー坂本悠が囁く。「突発本って同人業界だけかと思ったよ」(やかましい!)
 怒鳴るのは簡単だけれど、否定するのはむずかしい。だって世に言う宝塚本の発行点数たるや人後に落ちないだろう青弓社が、社運を賭けて世に問う(言ってない!、誰も言ってないって!) 宝塚関連本の新シリーズ『宝塚ゼミ』発刊を、私は今号のスペシャル講座として詳細報告した「ベルリン公演」観劇時ですらまったく知らなかったのだから。
 そう、この『宝塚ゼミ』の企画が立ち上がったのが8月。全体像が固まったのが9月。だというのに締め切りがナント10月31日!!!
 実質たった2カ月で、今後半年に一冊発行していこうともくろむ「シリーズ本」を立ち上げてしまおうというのだから、言ってのける青弓社も青弓社なら、引き受けてしまう私も私。度胸比べとしてはいい勝負だろう。
 それだけに我ながらよく動いたと思う。前述の坂本をはじめ、宝塚を語ろうとすれば欠かせない関西班メンバーの内海たもつ、早瀬淳子の執筆メンバーはほとんど泣き落としの状態で強引に参加させたし、イラストのかのんには「締め切り2週間は早く見込んでね。出来によっては書き直してもらうから!」と、何様なの??の態度にも出た。さらに、各方面にご協力をあおいだ舞台写真の借用や、インタビューの依頼、カメラマンの交渉など、少しでも気分がなごむかな?と、なぜかキティちゃんのノートに書きつづけた覚え書きがあっと言う間に真っ黒になるのに、どこかでは呆然としていた。とにかくあせってはいけないと、とりあえず明日しなければいけないことだけを考えるようにしていたものだから、それらがクリアされたときすっかり終わった気になって、肝心の原稿を一文字も書いていない事実に打ちのめされたりもした。
 でも、そんなむちゃくちゃな日々も喉元すぎればなんとやら・・・のいま、結局は楽しかったと思えるのは、私がやっぱり宝塚を愛しているからだと思う。2000年一年分の「公演評」、いくらファンでもいざ参加するにはハードルの高い「スターさんと行く公演記念の海外ツアー」、「同じ作品の外部公演とのリンク」、はては「娘役が床に座るの意味は?」のようなマニアック以外のなにものでもない話題まで、考えたり、語ったり、読んだりしている・・・そんな時間が幸せだったのは「宝塚ゼミ校長兼、主任教授兼、用務員兼、電話番」などと名乗っている、当の私が一番だったのだ。
 だから私はまるで少女のように高揚して「寿ひずるさんにインタビュー」したし、無念にも亡くなられた「作曲家寺田瀧雄氏への想いを語っていただいたアンケート」にあふれた、ファン諸子それぞれの胸つかれる想いを泣きながら集計していた。作品を論じようとすれば、誉めてばかりはいられないけれど、宝塚への礼節は何よりも大切にしたつもりでいる。そのわりには突発本(オイオイ・・)の泣きどころ、誤植や不備が多くてごめんなさい!なのだが、それらすべてを含めて、少しずつでもゼミをいいものにしていきたい、いま、心からそう思っている。
 いままで生きてきていろいろあったし、今年のクリスマスもやっぱり一人だけれど(!)、でも宝塚がそこに存在してくれていて、ときめいていられる時間に私はずっと助けられてきた。だからこそ同じ思いのあなたが(イエ、クリスマスが一人の方でなくていいのですよ!)ゼミを訪ねてくれるのを心待ちにしている。「図書室の関連本」を読みあさって作品世界を広げて、いつまでも語り明かしていられるような、そして、忌憚のないご意見を寄せてくれるような、そんなあなたを・・・。
「宝塚ゼミ校門、24時間開放中! 乞うご訪問!!」